オルレアンの少女36-裁判開始前からトラブル

キリスト教では「神は悪魔を使って栄光を現される」ということがいわれるが、ジャンヌもこれにあたるのだろうか。ジャンヌ研究の権威ペルヌー女史も「コーションはかくして、現代に伝えられた原本のおかげで不滅となっているジャンヌ・ダルクにふさわしいただ一つの記念碑を自らの手で建てることは思いもよらなかった」と書いている。

裁判開始前にまたしてもトラブル。2人の判事の1人に予定されていたルーアンの修道士が「自分の良心のために関わりたくない」とキャンセルしてきたのである。そんなドタバタしている裁判の状況に、イングランドから国王名で「有罪にならないようなら、イギリスに連れていってこちらが裁くぞ」と脅しをかけた。始めっからそうしたほうがよかった。

結局コーションの一人相撲で墓穴を掘ったことになる。イギリスでジャンヌが死んでいれば、証拠隠滅は簡単だっただろうに。慌てたコーションは各所に手をまわせて予審を非公開で済まし、第一回審理に持ち込むことになった。結局手続きミスということでも、この裁判が無効とされる理由の一つとなるわけだ。さらに弁護人もつけてもらえない。

第1回審理「カトリック教会の名において真実を述べると誓え」と言われたジャンヌは堂々と「神から与えられた啓示については神からの許可が得られなければ首を切られても言わない」と答え、最初から堂々めぐりとなった。結局最初からジャンヌが勝ち、その後裁判はジャンヌの啓示が神からかどうかを巡って争うこととなるのである。

下はフレッド・ロー作「ジャンヌ・ダルク裁判」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。