世界大戦への道38-西部戦線異状なし

戦争を最初から長期で戦おうとする者はまず居ない。第一次世界大戦も短期決戦のはずだった。出征した兵士達もクリスマスには戻れるだろうと楽観していた。実際これまでの近代戦争には行司が居り、一方が不利になると講和を呼び掛けていた。徹底的にやっつけると勝ったほうが有利になりすぎても困る。

ところがこの大戦は、列強がすべて参戦して当事者になったので行司役する者が居なくなった。参戦者は当然必死に勝ちを取りに行くものだ。そしてナショナリズムの時代であり、国民を総動員させてしまったので、自国の犠牲者が出ると中途半端で終わりづらくなっていた。

そして戦術そのものの変化である。南北戦争で本格的となった塹壕戦は、戦場に陣地をつくることができ、双方が攻撃を待ち構えることで長期戦の様相を呈することになった。主戦場となった西部戦線では、フランスとドイツが共に塹壕を拡張していき、海への競争と言われるほどだった。

ヴェルダンの戦いでは30万人が亡くなったが、それは劇的な決戦ではなく、日々の塹壕を挟んでの撃ちあいで死者が積み重なったのである。死者は補充されるので、なかなかお互いに有利にならず犠牲者ばかり増える。名作「西部戦線異状なし」で主人公が死んでも報告は「異常なし」なのである。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。