現代芸術13-月に憑かれたピエロ

1912年、シェーンベルクの代表作であり、現代音楽の先駆けである「月に憑かれたピエロ」が演奏された。この曲は、この詩を朗読する女優がピアノ伴奏に満足せず、シェーンベルクに委託したものである。ピエロは世紀末から20世紀初頭にかけて、芸術家達の好みのテーマで、不安定な人間の象徴である。

詩のストーリーとしては、月の幻想に憑かれたピエロがあちこちさまよい、遂には死刑を経験し、その魂は故郷に帰っていくというものである。華やかなベルエポックで、ヨーロッパ人は刹那の快楽に溺れ、人間存在の根源を失っている、この批判はハイデガーがやがて哲学にする。

ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」は夜を聖化し、シェーンベルクも美しい「浄夜」を作曲したが、ここではさらに先鋭化して叫びをあげたり、また鎮まったりを繰り返す。まさに作品世界の不安定なムードを見事に表現したのだ。この詩を音楽化することで、自由な現代音楽がスタートした。

小規模な編成や無調音楽には、もちろん権威主義的で大規模コンサートとなった権力批判が潜んでいる。ウィーンやパリの先鋭的芸術家達は自由主義、無政府主義的で帝国主義は大嫌いだったが、旧来のヨーロッパ帝国主義はもはや歯止めを失い、その坩堝の中でとんでもない地獄が発生するのだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。