その頃中東ではたいへんな事態が起こっていた。1257年ついにモンゴル勢のイルハンフレグは10万の大軍でバグダードを包囲した。アッバース朝のカリフ、ムスタアスウィムに対し、「日輪に逆らうことはならじ」とどっかの国みたいなことを言って降伏を勧告、しかしプライドだけ高いカリフはまともに拒否した。
翌年2月、モンゴルは城壁を登り、東岸地区を制圧。カリフは降伏を決意すると、首都防衛の兵が逃げるなら許すと返答。それをきいて逃亡した兵は待ち構えたモンゴルの餌食となった。2月10日カリフは投降し、13日都入りしたモンゴルは略奪の限りを尽くし、80万人が虐殺された。但しキリスト教徒はそれを免れた。実は正妻が東方キリスト教徒だったのだ。
バグダードは人工都市である。灌漑施設が破壊されれば大都市として存続はできない。幾世紀にもわたった繁栄はここに終わった。バグダードの滅亡はイスラムに衝撃を持って迎えられ、モスルやセルジュクのスルタン達が、モンゴルの基にいそいそと下り、忠誠を誓った。
一方、キリスト教は「天罰が下った」と喝采を贈った。なんとなれば妻が一応キリスト教徒だったからだ。何とコンスタンチン大帝と大皇后ヘレナになぞらえたという、いや褒めすぎだろう。んなこたカンケーないモンゴルは、シリアやパレスチナに侵攻するのだ。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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