現代芸術6-ロシアバレエの衝撃

1909年芸術上のロシア革命がパリを震撼させた。「バレエリュス」すなわちロシアバレエのパリ入城である。仕掛け人は希代のプロデューサー、セルゲイ・ディアギレフ。彼はロシアの芸術界からは追放されたが、ロシア芸術を西欧に紹介して見返そうと、07年ラフマニノフのピアノやロシアオペラの演奏を行った。

そして09年「セゾンリュス」(ロシアシーズン)と称してアンナ・パブロワ、ニジンスキーなど最高の踊り手を揃えてロシアバレエを上演した、バレエを下級エンタメと見ていたパリっこ達はその水準の高さに度肝を抜かれた。そして翌年ディアギレフが仕掛けたのがバレエ「火の鳥」である。

ロシア民話に基づく神秘的なストーリー、フォーキンの振付、若手ストラヴィンスキーによる大胆な音楽は絶賛を浴びた。近代に飽きていた西欧人は、ロシアという異界から来た生き生きとした古代の生命力をもった芸術に驚嘆したのである。

ディアギレフは天才を見つける天才と呼ばれ、ラヴェルやプロコフィエフらにも作曲を依頼、さらにマティス、ピカソなどの前衛画家にも舞台装飾をつくらせ、衣装はシャネルに依頼するなど、バレエを芸術として復活させるだけではなく、総合芸術の高みに押し上げた。19世紀後半から西欧は、他文化に圧倒される、世界の多様性の確保がいかに大事かということである。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。