聖王の御世7-アリストテレスに洗礼を施す

トマス・アクィナスはアヴェロイスの「世界の永遠性」について、実在する世界ではその考えも可能と肯定する。しかし存在原因たる神という「存在」がある場合、神が創造し、現実の存在者が有限であると言えると説くのである。

実はアリストテレスも神を存在の第一原因としている。トマスはさらに詳しく5つの方法で第一原因を述べ、つきつめれば神に到達する、としている。しかし単純に現象を「神がやった」というのでは全く不十分で、原因を追究できる限り追究しなければならない。ここに理性によるこの世の探求が肯定される

しかし、理性によってだけでは神には到達できない。なぜなら神という存在は、この世の存在のあり方ではないからだ、という。だから哲学は、神に到達する道具であって、神学が優位となる、という序列をつくった。トマスはアリストテレスをキリスト教化したといわれ、この後アリストテレスを基にしたスコラ哲学が一世を極めることとなる。

「神学大全」等大きな書物を書いた割には、彼はたいへんな悪筆で、そのため助手に口述筆記したそうだ。また彼が部屋で誰かと会話しているようで、後から聞いてみると、「ペテロとパウロに教えてもらってた」と言ったという逸話がある。聖人に認定するとき、奇跡が少ないと言われたが、教皇は「彼の書物が奇跡なんだ」と言ったそうだ。

下はベノッツォ・ゴッツォリ作「トマス・アクィナスの勝利」左がアリストテレスで右がプラトン。そして下に居るのがかわいそうなアヴェロイス

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。