現代芸術1-ピカソとリルケの邂逅

1905年、パリの「洗濯船」というアパートにアトリエを持ったパブロ・ピカソは、フェルナンド・オリビエという最初の恋人と同棲を始め、メランコリーに沈んだ「青の時代」から穏やかな色の「バラの時代」が始まる、その代表作が「サルタンバンクの家族」である。

後年この絵に感動した詩人リルケが代表作「ドウィノの悲歌第5歌」にこの絵を内面的に描写し、計らずも2人の芸術の巨人によるコラボが実現する。このサルタンバンクというのは路上パフォーマンスをして金をもらう最下層の芸人である。ピカソは当時サーカスをテーマに絵を描いている。

しかし何ということか、ピカソは彼らを砂漠を背景にして描くのである。左端のキリリとした道化師はピカソ自身に似ている。画家という芸術をしながら、自分はただの大道芸ではないか、自分の目指すものに迷っていたピカソ自身の姿だったが、彼はしっかりと何かを見ている。

リルケもまた、大道芸師達を人間の象徴として見ている。「さても世の市場広場よ おおパリの広場よ 果てしない見世物場よ」「虚偽の色に飾り立てられ運命の冬をしのぐ安物帽子を飾るために」しかしリルケは、そうではない自分達の行為が実を結ぶもう一つの広場があるという。ピカソもそれを探している。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。