1905年、フランスで政教分離法が成立した。この法律によってフランスのカトリック教会は原則的に公共部門から追放され、私的な領域となった。この背景にはドレフュス事件があり、この事件でインスパイアされた共和主義者や左翼は、フランスの反共和的勢力としてカトリックを目の敵にした。
この法律で、教会財産は国家に認められた社団に移管することとなっていたが、教皇ピウス10世が断固として反対したため、多くのカトリックは社団をつくらなかった。このため政府は強制執行に踏み切り、信徒側はバリケードを作るなど激しい闘争が行われた。
結果としてカトリック財産は公共のものとなったが、この闘争の結果、なんとカトリック教会はその公共財産を無償で使うことができるようになったのである。こうして今日では、ノートルダムを始めとしてカトリック教会は重要な観光資源となり、焼失したときも国が修復してくれるのである。
第一次世界大戦が勃発すると、政府は戦争遂行の思想的基盤としてカトリックを必要とするようになり、修道会と規制した法律を廃止した。ピウス10世の後を継いだベネディクト15世もフランス政府との妥協を計り、社団づくりを推進した。フランス政教分離は表面的には厳格だが、運用の点では智慧を使っている。。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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