1901年「社会的回勅」レールム・ノヴァルム発布10周年のときに、教皇レオ13世は回勅「グラヴェス・デ・コムニ・レ」を発布し、「キリスト教民主主義」という考えを示した。前教皇ピウス9世は最初近代化を目指しながら挫折したのだが、後任の教皇は共和主義フランスも承認する。
前の回勅と共にキリスト教民主主義は、富者と弱者の調和を図ろうとする。労働者や弱者だけが民ではない、と回勅では述べる。そして物質的に恵まれることが社会問題の解決ではない、社会問題は宗教や倫理の問題であり、それを解決するのは福音であると述べるのだ。
もはや教皇領はなくなり、ヴァチカンは古い領主的感覚から自由となった。レオ13世は、近代社会に適合したキリスト教の社会的使命を示そうとした。しかしこの時点では結局社会的勢力は和解をしようとせず、力に走って20世紀前半は戦争の世紀となってしまった。
第一次世界大戦後から、その反省からヨーロッパではキリスト教民主疑義に基づく政治活動や政党が出現することとなった。しかし今日、新自由主義によって社会的格差はかつてなく広がり、人種や民族の衝突も発生している。哲学者マルクス・ガブリエルは「倫理的資本主義」を提唱している。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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