ロマン派以後12-トスカと世紀末イタリア

1900年1月14日、プッチーニの歌劇「トスカ」が初演された。このオペラは知っての通り、ナポレオン戦争が舞台となっている。オペラの当時は、ローマはナポリ王国の支配にあり、悪役スカルッピアは恐怖政治を行い、政治犯を捕らえる。そして歌姫トスカの恋人も捕らえられるというストーリー。

制作当時のイタリアでは現実主義のヴェリズモが流行し、プッチーニの前作「ラ・ボエーム」も、パリの貧しいボヘミアンを描いている。トスカは歴史劇といえるが、なかなかそうともいえない。1898年からパンの価格高騰で大暴動がシチリアから広がり、北部に波及していた。

ミラノでは、労働者らのデモに軍が発砲し、100人以上が殺害されるという事件が発生、国王ウンベルト1世は鎮圧した将軍を称賛し騎士の称号を与えた。99年には治安維持法が提案されるなど弾圧の時代だった。なんと自由を求めるトスカのストーリーは現実の話だったのだ。

トスカはスカルッピアを殺害し、恋人を助けられず自殺する。血塗られたストーリーをプッチーニの劇的な音楽が彩る。舞台は終わるが、ストーリー後ナポレオンによって反動が終わる。当時の現実もこのままでは終わらず、1900年7月24日、伊国王ウンベルト1世が「虐殺への報復」で暗殺されるのだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。