近代思想24-フロイト無意識の発見

1895年、精神科医のジークムント・フロイトは、「ヒステリー研究」を発表し、ヒステリーの原因は幼少時の性的虐待が原因であるという説を提唱した。そして彼は「無意識」という概念を使うことになる。この考えは、人間は理性が支配しているという近代哲学にとって衝撃だった。

それどころかフロイトによれば、人間は基本的に無意識によって支配されている。先だってニーチェは、人間の道徳の根本は「好き嫌い」だと述べたが、フロイトはリビドーと名付けた無意識的な性的エネルギーによって人間の行動の根本は支配されているとして、ニーチェの考えを拡張した。

フロイトは唯物論的思想を持っており、人間の脳の働きが解明されれば、人間行動はすべて解明可能であるという考えを持っていた。今日では、心療内科や精神科がもう普通の医療となっており、人間の理性でコントロールできなくなるということは織り込み済である。

啓蒙は理性で迷妄を開くはずだった。ところが19世紀は理性は金銭欲や支配欲の言い訳となり、詭弁が横行し、人種主義・進歩主義・民族主義が、いかにも理性的に主張された。結局理性は支配者の都合のよい言葉として、感性が優位となり、暴力が正当化されてゆく。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。