近代思想22-汎ゲルマン主義

汎スラブ主義と時同じくして汎ゲルマン主義が勃興してくる。これはゲルマン民族=アーリア人の優越性を主張し、ゲルマン民族の団結こそが世界を救い、世界を進歩させるという思想である。1890年には「全ドイツ連盟」が結成されて、イギリスとの妥協に反対し、ドイツの植民地、世界進出を主張した。

彼らはこれまた「ローマからの離脱」を主張、キリスト教をアーリア人的に純化させることを目指すのである。イエスキリストはアーリア人であり、ユダヤ人がつくった旧約聖書は廃棄すべし、そしてゲルマンの神々をこれに替えるべきだという主張まで展開する。

そしてまたカトリック系の人種は短頭で、アーリア人である長頭のゲルマン民族より劣っているというまるで根拠のない主張も行っている。ここで念頭に置いているのは、ローマではなくおそらくフランスである、しかしフランスは元ゲルマン民族なのだが、ローマ人と混血してその資格を失った。

いずれにせよ民族的に純潔化されたキリスト教が世界を救うという考え方は、汎スラブ主義と変わらない。ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世はこの思想に影響されて世界をめざし、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ2世もバルカンをめざして、やがては世界の火種となっていくのだ。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。