後期印象派といわれる画家は、モネのような光を追いかける画風に不満を抱くようになる、つまり描かれたものは皆色彩になってしまい、対象の堅固感がなくなってしまうのだ。その代表格といえる画家がポール・セザンヌである。彼は第4回印象派展には出品せず、故郷のエクスにこもってしまった。
セザンヌは、くだらない世評よりも普遍的な美を求めていた。とはいえ生活は困窮し、画材を買うために絵を渡したり、親友の小説家のエミール・ゾラにも借金をした。そして少ないながらも信奉者が出て、1895年の最初の個展以来ようやく作品が評価されるようになった。
1880年代から描いた静物画は、対象物の立体感を出すため複数視点から描かれている。我々は水平に見ても、頭の中で上から見た像を組み合わせてその対象を認識する。古典派の絵画でもこうしたことはなされているが、セザンヌは意識的にそれを行って立体感を出したのだ。
そして彼が生涯追いかけたのが、故郷にそびえるザン・ヴィクトワール山である。その堂々たる質感を出すために最後は四角形や丸の重なりとして表現する。彼は「自然を円筒、球、円錐によって扱う」と述べ、後のキュビズムに多大な影響を与えた。対象を描こうとした方法が対象を解体して再構成することになったのは皮肉だが。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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