ロマン派の時代58-サムソンとデリラ

1875年はビゼーの「カルメン」が初演された年だが、サン=サーンスも歌劇「サムソンとデリラ」を作っている。どちらも悪女(ファムファタル)が主人公で、メゾソプラノである。メゾは悪役が多いが主役はソプラノ、ここで晴れて?主役となった。フランス人は女性の低い声にエロい魅力を感じるらしい。

サムソンとデリラというテーマは聖書に出てくるが、西洋絵画ではしきりに描かれている。逞しい男とエロい女性との取り合わせは、画題として絶好だからだろう。この頃作曲家は、マドレーヌ寺院のオルガニストを辞めて、カトリックだが自由に作曲できるようになっていた。

フランスではロマン派オペラが盛んであり、先輩のグノーは「ファウスト」で神の救済を描き、聖書からは「シバの女王」を作っていた。オペラで名声を得たいサン=サーンスの野心に火をつけないわけがない。

ストーリーは正統派で聖書の通り。だがかえってデリラの誘惑のリアリティが難しい、ここであのワグナーの陶酔的な音楽が採用されている。しかし繊細な彼の音楽と結合して美しい輝きを放っている。名曲「あなたの言葉に私の心は開く」は極致ともいえ、サムソンのように「デリラ愛してる」と思わず言いたくなる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。