第3回十字軍12-仏王とジョン故国で叛旗

野戦でサラディンが仕掛けて敗北!彼はもともと戦闘の達人ではなく、戦略を立てて遂行する人間。十分に成功するははずの戦略が、リチャードの決断だけでひっくり返されたのだ。こういう点でもアルスーフの戦いは川中島に似ているのだが、サラディンははじめて得体の知れない恐怖に襲われた。

サラディンはもはやリチャードと戦うことは止め、ヤッファをはじめ途上の砦をことごとく焼き払った、焦土戦術である。十字軍はヤッファに入城したはいいが使い物にならない。さらに念のいったことで、エルサレムへの海からの補給拠点であるアスカロンまで破壊されていた。

十字軍の足は止まってしまった。そこへ母アリエノールからの手紙が届く。なんと末子ジョンが、仏王フィリップに乗せられて、ノルマンディーで反王キャンペーンを始めたという。そして1192年1月、フィリップ自らジソール砦に侵攻した。母は家臣を引きとめるだけでせいいっぱいだった。

ところが聖地では、名目上エルサレム王だったコンラートがアサシンに殺されてしまった。その危機にすかさず活躍したのがイベリンである。彼は先王アモーリーの娘で継承権を持っていた王妃イザベルを今度はアリエノールの孫のアンリと再婚させた。こりゃ使える、とリチャードは、エルサレム引き渡しで腹を知るサラディンとの交渉役にした。

下はアサシンに暗殺されるエルサレム王コンラート

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。