帝国の時代52-最後の授業

1873年アルフォンス・ドーデの「最後の授業」という短編小説が出版された。これは侵略戦争の悲惨さという文脈で読まれ、日本の教科書に載ったこともある。アメル先生は、フランスが敗れてアルザス地方がドイツ領になったのでフランス語が教えられなくなり、「今日が最後の授業」だという。

ところが史実的には、アルザスはドイツ語方言のアルザス語を母語としていた。アメル先生はさらにフランス語は世界でいちばん美しく、一番明晰な言葉です。そして、ある民族が奴隸となっても、その国語を保っている限り、牢獄の鍵を握っているようなものなのです」とまで言う。

ところがアメル先生は、子供達がフランス語を上手に話すことも書くこともできない、と認めている。何のこたない、アメル先生自身が、フランスへの同化政策を推進していたわけである。フランス人特有の国粋主義、あるいは文化帝国主義の匂い満々

2つの国の狭間というのは今日に至るも複雑な問題を抱えている。さらに戦争となると、ナショナリズムが席巻し、一方に有利な物語があたかも事実のように流布されて、感情に訴えるからやっかいだ。21世紀はイスラムやロシア、中国などが問題をなげかけている。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。