もはや降伏しか残っていないはずのバリアンは、抜けぬけとサラディンの前で全員の安全な脱出を求めた。さすがにサラディンもそんなことは認められない、無条件降伏しかなしと。ところがバリアンは食い下がる「もし認められないなら、エルサレムのムスリムを皆殺しにして、岩のドームも何もかも火をかける」うーんまるで勝海舟。
サラディンは連合軍のリーダー達を見ると「ま、いいんじゃね」と。ということで、男10ディナール、女子供は1ディナールで去ってよし、と答えた。しかしバリアンは、貧者への恩典、7千人を3万ディナールで解放してくれ、とさらに求める。ずうずうしいというか、しかし慈悲に満ちたサラディンはOKしちゃうのだ。
ということでエルサレムの交渉はまとまり、サラディン達は入城して、預言者の遺跡を訪問して落涙、一方キリスト教徒達は脱出した。一旦かけたお慈悲は混乱の中でどんどんインフレ、貧者は結局無料で解放。サラディンは何と慈悲を追加して、家長は無料、未亡人にはお土産まで渡すことになっちゃった。
財務官たちはさすがに怒る。せめて金持ちの解放料を増額しろと。だってエルサレム総大司教などは、貯めこんだ財宝などを何台もの荷車に乗せて一般人料金で出ていったのだから。サラディンは「約束は約束。キリスト教徒はイスラムの慈悲深さを忘れはしないだろう」。この慈悲深さで国庫はすでにピンチ。そしてキリスト教徒はその期待に反してまた十字軍を送るのだが。
下は映画「キングダム オブ ヘブン」の見せ場サラディンとバリアンの会見。当時の絵もあるので本当にあったようだ
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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