英雄サラディン13-完勝!ヒッティーンの戦

サラディンに対して十字軍側も3万人程度の戦力はあった。軍議では、和平派のトリポリ伯レイモン3世が籠城を主張し、主戦派のルノーとの間でギー王も決めかねていた。しかし妻が追い詰められているのを知ったレイモンが戦闘已む無しに変わり、ギー王も決戦を決意、野戦にもちこむサラディンの作戦に嵌った。

進軍が始まるや、サラディンは、後衛のテンプル騎士団に別働隊から仕掛けさせ、進軍が遅れ、水のない平地で休まざるを得なかった。1187年7月4日、十字軍は水や緑のあるヒッティーンの丘をめざさざるを得ず、サラディンの待ち伏せ攻撃の餌食となった。3つの軍は完全に分断され混乱。そして仕上げに雑草に火をつけて、火攻めにあった。

両軍の決戦はサラディンの完勝に終わり、真の十字架を奪取され、ギー王も、ルノーも捕虜、レイモンは敵中突破して逃げ延びた。2人はサラディンの前に引き出され、ギーに水を与えられ、ルノーにまわそうとしたが、サラディンに止められた。イスラムでは処刑する者には食事を与えないからだ。ルノーは、サラディンの公約通り処刑された。

この決戦を機にサラディン軍は破竹の勢いで十字軍都市を陥落させ、9月にはティール、トリポリ、ラタキア、アンティオキア、そしてエルサレムだけとなっていた。サラディンは、海からもエジプト艦隊で包囲し、9月20日、遂に聖都に到着。守るのはバリアン・イベリン、映画では英雄となっているが、実物も確かに面白い男のようだ。

下は映画よりフラフラの十字軍を待ちうけるサラディン軍



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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。