南北戦争が正式に終わる直前、1865年4月14日リンカーン大統領が暗殺された。暗殺者ブースは南部の人間ではなく北部メリーランドの住人だったが、白人至上主義者で奴隷解放に反対し、そのため南部連合を支持していた。彼は北部を混乱させて、終戦をさせないために暗殺を実行したのである。
ブースは、大歓迎を期待してヴァージニア州に逃げ込んだが、どこでも拒否されて自殺を図ったが、結局射殺された。残りの一味も逮捕され、軍法会議で厳しく裁かれた。南部の著名人もリンカーンに弔意を示し、リンカーンは暗殺されることで、建国の父のような聖人的存在となった。
しかし実際のリンカーンは、ルイジアナでも自由民として黒人をプランテーションで働かせることを認め、合衆国連邦を再建するための妥協をしていった。これに対して共和党は、白人有権者の過半数が奴隷制廃止の入った合衆国憲法を認めなければ州政府を認めないという法案を可決した。
リンカーンはこの法律を実施せずうやむやにして再び連邦の再建をめざすが、この姿勢は新大統領のアンドリュー・ジョンソンに引き継がれ、共和党急進派と対立して、史上初の弾劾にかけられる。リンカーンは幸か不幸か戦後の対立にかかわらず、理想の聖人の地位に納まった。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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