印象派革命1-マネ「草上の昼食」

1863年美術史上の大事件が起こった。フランスの権威ある美術展はサロン展だった。しかしこの年は3000点以上の作品がサロンに落選し、画家達の大抗議が起きた。もとより大衆の人気取りのうまい皇帝ナポレオン3世は、落選者もサロンに付随して落選者もその一角で作品を展示してよい、と通達を出した。

その落選者展の象徴的作品が、エドゥワール・マネの「草上の昼食」である。紳士淑女のピクニックのようだが、何と女性だけがヌードで描かれている。しかもヌードの女性はお腹についた脂肪もはっきりわかる生々しい現実の女性である。サロンは不品行として落選させた。

しかし似たような構図は、ティツァーノがすでに描いている、但し神話画としてだが。マネはそれを当時のフランス田園地帯に置き換えただけだと言いたく、通常神話画に使うような大キャンバスを使っている。つまり神話ではヌードを描くくせに、なぜ現実の人間を描かないのかと。

さらにタッチも粗く、細部まで描かれていない、ある批評家はこれをスケッチと評価した。マネはここまで酷評されるとは思わなかったようで落ち込んだようだが、この草上の昼食は、落選者展と相まって、保守的なサロンへの反逆となって、やがてサロンを飛び出した印象派展へつながっていく。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。