帝国の時代26-「レ・ミゼラブル」

1862年ヴィクトル・ユーゴーの傑作「レ・ミゼラブル」が出版された。このときユーゴーは帝政に反対して亡命してチャネル諸島に住んでおり、出版社に「?」と打電すると「!」という返事が返ってきたらしい。彼は帝政が終わると、英雄の如くパリに迎えられた。

ユーゴーは、「エルナニ」で大成功をおさめ、子爵となりルイ・フィリップ時代に貴族院議員となる。48年の二月革命では国王継承に賛成し、共和制になるとまた議員になり、今度は共和主義者になった。そしてルイ・ナポレオンの当選に尽力するが、帝政には最後まで反対して亡命した。

「レ・ミゼラブル」の執筆は45年から始まったが、発表されるまでのフランスの激動の社会を描くことになった。政治的に目まぐるしく変わった彼の思想の根本は人道主義である。「海洋よりも天空よりも壮大な光景、それは人の魂の内奥である」人が悪になるのは、社会が悪いのだ。

物語中ジャン・バルジャンを回心させたのは三リエル司教だが、ユーゴーは、現実のキリスト教には失望して、人道主義的な真のキリスト教を求めていた。社会を変えるだけではダメで、人間が変わらなければならない。「レ・ミゼラブル」はその人道主義の金字塔といえる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。