近代と信仰13-民衆の聖女ジャンヌ・ダルク

1842年、国立古文書学校のジュール・キシュラがジャンヌ・ダルクの裁判記録をまとめて発表した。ここにフランスで伝えられてきた伝説の聖女の生の声が蘇ったのだ。56年にはフランス語版が出版され大いに話題を呼ぶ。同時に歴史家ジュール・ミシュレーが、フランス史第5巻でジャンヌ・ダルクを書いた。

ミシュレはジャンヌを「世俗の聖女」と表現する。ミシュレは共和主義者だが、共和主義の象徴がフランスには居ない。ナポレオンは皇帝だし、ロベスピエールは独裁者になった。民衆のために生きたジャンヌこそふさわしい。「我々の祖国が一人の女性の心から生まれたことを感謝しよう」

ミシュレは、ジャンヌを導いた神の声を啓蒙主義的に内心の良心の声と読む。そして信仰深く、民衆から出てそれを導く理想的な革命家として描いた。しかし60年カトリック側からアンリ・ワロンのジャンヌ伝が発表され、カトリック的にも新しい聖女としての期待が高まった。この時代、皇帝も自由を認め、穏健な共和主義が主流となった「ジャンヌによって我々は一つになる」と統一の希望となった。

それはともかく天界では、「ねーイエス様ー、あたしってばまだ聖女になれないのー?」「まだまだクライマックスにはあと半世紀経たないと」「えー!そんなにかかるの?マリア母様それって仕込みすぎじゃないー?」

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。