1861年ジョン・スチュアート・ミルの「功利主義論」が出版された。功利主義とはジェレミー・ベンサムが提唱した考えで、「最大多数の最大幸福」という言葉に集約される。産業革命の中で物質が豊かになるイギリスで、物質を多数に行きわたらせることが、正義であるとの考えかたができたのは無理がない。
ベンサムは何と「幸福計算」という手法を使って、善悪を判断しようというのである。しかし幸福や善悪を物質的豊かさのみで計るというのは「豚にふさわしい学説」とまで批判を受けた。また幸福を平等な個人として考えたので、個人の社会的状況によって幸福が違うということに至らなかった。
j・Sミルは、これに対して人間の目的は物質的快楽だけではないという。人間の行為の目的な豊かな生の充実であり、それにはキリスト教的な「自分の喜ぶことを他人にもしなさい」という善行の幸福も入っているというわけだ。従って幸福は社会的なものとなる。
j・Sミルの時代は、資本主義の貧富の差が現れ、誰もが幸福とは限らない時代である。彼が社会的な功利を提唱するのは、労働者の福祉がなされる時代に適合していた。そして20世紀には、経済の豊かさをの果実を、社会全体に行きわたらせる福祉社会論として発展することになる。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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