1861年フランス人化学者ルイ・パストゥールが、有名な「白鳥の首実験」で、空気中の最近が腐敗を引き起こすことを証明した。そして1876年にドイツのコッホが炭疽菌の純粋培養に成功して細菌学説を確立する。実はパストゥールは敬虔なカトリックの信念に導かれたのである。
昔から病気の原因は何か人間の罪や悪行によるといわれてきた。パストゥールは、罪はキリストの贖罪によって贖われたはずだと考えた。そうだとすれば、病気の原因は外の悪魔である、その悪魔の正体をあばこうと考えたのである。それさえなくなれば人間は悪から解放されると。
そしてパストゥールは、ジェンナーが始めた種痘を拡大してワクチンの予防接種という考え方を打ち出し、炭疽病、狂犬病などのワクチンを開発した。この思想は何と洗礼から発想したのだという。ワクチンを打って、外の悪魔=病原菌に対抗する力を身体に与えるというわけだ。
パストゥールはこの考えを、科学好きでカトリックを信奉していた皇帝ナポレオン3世に売り込んで信任を得て、ワクチンを広めることに成功した。消毒法を推進したのも彼である。外の悪魔は解明されたが、人間の内なる悪魔もフロイトが解明しようとする。しかし人の世から悪はなくならない。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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