第2回十字軍4-またも起こったユダヤ人虐殺

第2回十字軍が出発するときには、第1回でも起こったユダヤ人迫害、虐殺がまたもライン地方で起こった。1146年、ルドルフというシトー会修道士が、十字軍のアジテーションを各地で行い、そのときにユダヤ人を虐殺すべきと言ったと伝えられる。

1147年2月、ヴュルツブルクで巡礼者たちが集まっているときに、バラバラ死体が発見され、これがあたかもユダヤ人がやったこととなり、巡礼者たちは、街に居たユダヤ人を虐殺しはじめ、止まらなくなった。このような事態は各地で起こり、生き残りは皇帝の庇護を求めて、ニュルンベルクに逃れたとのことだ。

これを救ったのは、シトー会の聖ベルナールである。彼は、書簡をあちこちに送り、このルドルフが間違っていることを述べた。その理由というのは、ユダヤ人は、ある意味キリストの受難の証人であり、キリストを殺した罪を購っている最中なので、人の手で罰することは許されないということだった。なかなか微妙な理由であるが、この時代の公式見解。

しかしともかく、ベルナールの言葉の威力は絶大で、その後ユダヤ人虐殺は止んだようだ。聖ベルナールはユダヤ人の側からも、神が送ってくれた人として感謝されている。今日、アメリカのトランプ大統領が公然と人種差別を口にし、イスラム難民が攻撃される「分断の時代」に入ったといわれる。あまり社会が遅れた過去の時代というわけにはいかなくなった。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。