帝国の時代6-クリミアの天使

「愚かな戦争」と言われたクリミア戦争だが、ヒロインが誕生する、「クリミアの天使」と言われたフローレンス・ナイチンゲールである。彼女は大富豪に生まれたが、頭が良いうえに感受性豊かで、社会的格差を目の当たりにした。17歳のときにキリストが現れ「我に仕えよ」と言われたという。

31歳に両親の反対を押し切り看護教育を受けて就職。国防相シドニー・ハーバートは、現地の悲惨な病院環境の報道を受けて、ナイチンゲールに白羽の矢を立て、従軍させた。1854年10月にスクタリ野戦病院に赴任したが、負傷兵の死亡率は42%にのぼっていた。そして軍は男の世界として女性の就労を受付けない。

54年11月5日、ロシア軍の本格的な攻勢であっという間に負傷兵が激増して、手が足りなくなってようやく彼女に出番がまわってきた。彼女は包帯を巻くため8時間も跪きの姿勢を通し、足の切断のときは最後まで見守り、夜はランプを持って、野戦病院中を見回った。

医療リソースの不足を国防相に訴え、個人資産も投げうって病院の改善を行い、死亡率はなんと2%まで激減する。彼女の活動は新聞に報道され、一躍ヒロインになったが、彼女は戦争終結後、偽名を使ってこっそり帰国した。そしてイギリスの病院の状況を統計的に分析し、衛生改革に生涯を捧げた

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。