ヴェルディは、すでに1847年にシェークスピアの「マクベス」をオペラ化している。そして深く人間を探る彼は従来では考えられなかったオペラをつくる、せむし男を主人公にした「リゴレット」である。この作品はユーゴーの「王は愉しむ」を原作としているが、この戯曲は発禁を受けていた。
「リゴレット」は、舞台をマントヴァに移して許可を取る。とはいえこのオペラは、好色な貴族にお追従をしていた道化が、今度は自分の娘が犯され、復讐を図れば、娘が身代わりになって殺されるという陰惨な悲劇である。しかし現実に代わるカタルシスを表現したこのオペラは大成功を収めた。
ヴェルディは次も「イル・トロヴァトーレ」という復讐を題材にしたオペラを作り、そして手掛けたのがアレクサンドル・デュマ原作の「椿姫」である。娼婦上がりの女性が、従来社会に理解されず、悲劇を迎えるというドラマは、自分と同棲する恋人ジュゼッピーナの反映である。
このオペラは、現実の社会を描くという点では、その後に流行る「ヴェリズモ」の先駆けだった。華やかな社会の裏面を描くという点では、リゴレットからの流れと一致している。「椿姫」は1853年にヴェネツィアで、何とか検閲に許可されて初演したが、準備期間がなく失敗に終わり、再演で成功した。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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