第1回十字軍20-死せるエルサレム王の帰還

1118年4月2日、エジプト遠征の途中で病に倒れ、エルサレム王ボードワン一世が崩御。十字軍創業世代が亡くなる。若く猪突猛進で騎士の鑑になろうとしたタンクレード、野心まんまんで我儘で女たらしのボエモン、プライドばっかで失敗ばかりのレーモン、皆亡くなっていた。

ボードワンは53歳、まあこの時代で多忙すぎる王としてはよく生きたといえるだろう。彼の手腕がなければ十字軍国家はあっさり潰れていただろうが、それが良かったのか悪かったのか、神のみぞ知るというヤツだ。ところが異郷の地で亡くなったので、エルサレムに帰るまで死を気づかせてはならない。

諸葛孔明か武田信玄か、いやもっとリアル。何と彼は内臓を抜かれていわばはく製にされて馬の背にくくりつけられ、そのままエルサレムへの帰途についた。エルサレム帰還は4月7日、キリストがエルサレム入城した「枝の主日」に合わされた。亡き王はキリストの通った黄金の門を通って入城。入城するや、皆緊張がほぐれ、讃美歌が泣き声に変わったと記されている。

彼は直ちに葬儀が行われ、聖噴墓教会の兄ゴドフロアの横に葬られた。記念する大霊廟が建設されたとのことだが今はない。そして、ちょうど同じ4月5日にセルジューク朝スルタン、ムハンマド・タバル崩御、そして8月15日にビザンチンのアレクシオス1世崩御。なぜか世代交代は連鎖することが多い。ともかく名実ともにこれで1つの時代が終わったのである。

下はギュスターヴ・ドレ作「ボードワン王の死」

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キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。