1848年から翌年にかけてドイツ各地で革命が勃発している。ドレスデンでは49年5月蜂起が起こった、そしてその先頭に立ったのが、宮廷管弦楽団指揮者だったワーグナーである。彼は宮廷音楽の改革を度々進言していたが、聞き入れられず、新作オペラ「ローエングリン」の上演が取り下げられてキレたのだ。
もちろんザクセンには未だ議会もなく、自由主義者は憲法を求め、王がプロイセン軍を入れようとすると、民衆は阻止して市民が倒れると、街にバリケードが築かれた。ワグナーは檄文だけでなく、手榴弾をつくり、聖十字架教会の頂上に立って戦況を司令部に報告した。
しかしプロイセン軍が到着すると、王軍は反撃に出て、5月9日参加者は逮捕された。ワーグナーも指名手配されてチューリヒに逃亡を与儀なくされた。宮廷劇場も炎上し、ワグナーに一人の兵士が(ベートーヴェンの第九に出て来る)「神々の火が点きましたね」と言ったという。
革命の中で、ワグナーはロシアのアナーキストであるバクーニンの影響を受けた。宮廷劇場の炎上と共に「一切の破壊からの再生」という思想は、「神々の黄昏」最終シーンのインスピレーションを与えた。ローエングリンは50年にリストの尽力で上演されるが、ワグナーが見ることは叶わなかった。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント