ロマン派の時代29-ヴェルディと教皇

売れっ子作家となったヴェルディは、次々とオペラを発表し、「ガレー船の日々」というほどの忙しさだった。次の「十字軍のロンバルディア人」も権力批判があり、オーストリアのミラノ司令官が検閲したが、ヴェルディが「作品を破る」と言って、ミラノの市民が沸き立ち、結局上演されて大好評を博した。

そして彼は1846年、「アッティラ」を創る。アッティラとは、ご存じの通り、ローマ帝国末期にヨーロッパを席巻したフン族の王である。オペラはアッティラがイタリアへ攻め込んだところから始まるが、プロローグから、敗北した女戦士をして「聖なる祖国への無限なる愛よ」と歌う。

そして第一幕の2場では、のっけから「神の土地ローマに侵入すると罰を受ける」という予言から始まり、どう見ても当時の教皇レオ1世にしか見えない老人レオーネが現れて、恐れてアッティラはローマから退却する。これは実際にあったレオ1世の会見を基にしている。

何とこの2か月後にピウス9世がローマ教皇になるのだから、このオペラはどう見てもピウス9世がイタリアをオーストリアから取り返すというメッセージである。ピウス9世への期待は高まるばかりといえよう。そしてこのオペラが語るように、教皇にはイタリア解放の期待が寄せられていたのだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。