ロマン派の時代27-「雨、蒸気、速度」

新しい時代は新しい風景を生む。1844年ウィリアム・ターナーの「雨、蒸気、速度ーグレートウェスタン鉄道」が発表された。グレートウェスタン鉄道(GWR)は、リヴァプール港に対抗してブリストル商人達が建設した、ブリストルの港からロンドンを結ぶ総延長245kmの鉄道である。

この絵はGWRの機関車が、テムズ川の鉄橋を当時の猛スピードで走り抜けてゆく風景、ロンドン名物の霧と蒸気が相まって、幻想的な風景を醸し出している。はっきりわかるのは赤い機関車だけで、当時の機関車に対する驚きの感情がよくとらえられる。日本で新幹線ができたときのようだ。

ターナーは、イタリアでヴェネツィア派の劇的な色に触れ、自然の色の動き、そのエネルギーを表現しようとした。「吹雪-港の沖合の蒸気船」を描くために、マストに4時間も縛り付けさせて、大気や波の動きを観察したのは有名なエピソードだが、当時は「石鹸水と水漆喰で描かれた」と酷評された。

ターナーの絵は、後代のフランス印象派に大きな影響を与えた。駅や機関車の絵は、ピサロやモネが描き、「ノラム城、日の出」は、印象派の語源となったモネの「印象、日の出」に直接的な影響を与えている。ターナーが先鞭をつけた風景画は、印象派によってメジャーになる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。