「神それを望みたもう!」1095年、クレルモン公会議で行ったウルバヌス2世の演説は中世最高の名演説だという。彼はクリュニー出身で敬虔は教皇だったが実は大弁舌家だった。そして教皇はハインリヒ4世との叙任権闘争のさ中、それを変え自信のついた欧州を団結させる効果はおおいにあった。
十字軍に参加した者は、命を落としても免罪がなされ、故郷に残してきた財産は神の平和で保障されるとなった。この免罪はやがてすべての行為の免罪になってゆく。「聖戦」思想は、イスラムの拡大時に生みだされたものだが、キリスト教も宣言し、今日に至るまで形を変えて継続している。
しかし、大きな視点で見れば、十字軍は古来から続いてきた地中海沿岸の領地争いの一部であり、影響は沿岸の一部地域である。むしろ宗教が絡み、普遍的な戦いの一部として記録され、継続されたことが、後世への影響こそ大きかったといえるだろう。
ともあれ、この名文句はこの後熱狂的なスローガンとなった。民衆は宗教心から、王や諸侯は信仰と名誉のため、騎士たちはヒロイズムから、野望のある者はその実現のため、皆浮かされて聖地へと赴くのである。2000年、ヨハネ・パウロ2世は十字軍を謝罪し、神の赦しを乞うた。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント