「金持ちになりたまえ、さもなくばそのふりをしたまえ、それもできんようならケチケチと暮らしてご苦労様」(ゴリオ爺さん)。新興ブルジョワが勃興する復古王政から7月王政のフランス社会を「人間喜劇」として活写した人物がいる。オノレ・ド・バルザック、フランス最高の文豪の一人である。
彼は1831年「あら皮」でデビューし、ジャーナリスト兼小説家として活躍した。しかし彼はこの7月王政を「拝金主義者の貴族制」として嫌悪する。ブルジョワは、自分の金もうけが中心で統治力がなく、かといって人民は変えることはできるが、それから先のことをする力がない。
彼は1834年に発表した「ゴリオ爺さん」で、シェークスピアの「リア王」を翻案する。娘思いで娘のために尽くしたゴリオは、娘たちに利用し尽くされて主人公ラスティニャックに看取られるだけで亡くなる。彼はエゴと金が万能になった社会をリアルに見ながら批判する。
しかし主人公ラスティニャック自身が、出世と金のためにあくせくしてゴリオを利用していたのだ。「誰もが美徳を求めている、だが誰が美徳を備えている?」バルザックは「次は僕との勝負だ」とラスティニャックに言わせるが、彼はナポレオンを求めていた。二月革命から再度帝政になるフランスの行方を見通していたかのように。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
0コメント