ロマン派の時代17-エフゲニー・オネーギン

ロシア皇帝ニコライ1世は軍事マニアで文化に関心がなかった。1826年には露土戦争を起こし、ワルシャワ蜂起を鎮圧してポーランドを直轄領化した。1828年にはイランとの戦争を行い、アルメニアを割譲させた。中央アジアに進出し、カフカースの民族弾圧を行った。

まあそんな皇帝下で、西欧の自由思想がインテリの中に浸透してロシア文学ができるが、それはロシアを書きつつ、ロシア社会の批判を中に入れることになる。その傑作が、25年から32年にかけてプーシキンが書いた「エフゲニー・オネーギン」である。この小説は章ごとに刊行され、読者の反応を見ることができた。

貴族のボンボンのエフゲニー・オネーギンは、ペテルスブルクで楽しめず、領地へひっこむ。ここでロシアの農民社会をつぶさに観察する、これは政府と衝突して田舎にひっこまされたプーシキンの経験が出ている。恋をするのも、決闘をするのも、プーシキンに似ている。

西欧流の自由恋愛をしたくても、ロシアの社会風土に拒絶される。といったところで、ロシアにこんな恋愛小説もなかったわけだ。この小説は韻文で、平易なロシア語でも文学が書けることを示し、その後のロシア文学の基礎をつくり、同時にロシア社会を鳥瞰したのである。

0コメント

  • 1000 / 1000

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。