最後に天からファウストを救うのは、マルガレーテと聖母である。これはダンテの「神曲」の天界編をモデルにしているためだ。煩悩にまみれて苦悩する男の世界を純粋な乙女が救うというテーマは、男性エゴの塊だが、この後ワグナーが盛大に広め、宮崎 駿まで描いているわけだからあながちバカにできない。
西洋文化の根本のキリスト教で世界を救うのは復活したイエスであることはいうまでもない。しかし、聖書には書いていないのだが、一旦死んだイエスをやすらえたのは聖母マリアになっている。中世末期からルネサンスにかけて「ピエタ」が流行し、その傑作をミケランジェロが創ったのはいうまでもない。
「スタバートマーテル(悲しみの聖母)」は、12世紀から普及して、パレストリーナの歌で有名だが、つまり聖母は生きている間からイエスの犠牲となっていたということであり、聖母崇敬の根拠となっている。つまり女性による救済は、キリスト教の中に隠されていているのである。
「天の女王(元后)」の聖母の称号は、古くからあり、キリスト教は一神教を守るためにかなり注意をして扱ってきた。ゲーテはイタリア美術に昏倒していたので、聖母救済を遠慮なく使えたわけだ。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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