1832年3月22日、文豪ゲーテが82歳で亡くなった、最後の言葉は「もっと光を」だったそうで、彼はあらゆる意味で暗闇を嫌がったそうだ、啓蒙時代に理性をもって生きたゲーテらしいといえる。しかし彼が生きたフランス革命からナポレオン、ウィーン体制の時代はとても光の時代とはいいがたい。
そしてその翌年ゲーテの畢生の大作「ファウスト」完結編が発刊される。第一部では、人生の再生をかけて悪魔と契約して若さを得たファウスト博士は、ウブなマルガレーテを誘惑して、子供を殺させ、彼女に拒絶されて、牢獄に残したまま無慈悲に立ち去る。
第二部ではファウストは、政治に口を出し、皇帝の要望で古代に行き、美女ヘレナに恋をする。さらに海を埋め立てて理想の国をつくろうとするが、それに逆らう老人を結局殺してしまう。ゲーテの人生と生きた時代が、アレゴリーとして示されている。そして理想国家もファウストの幻想でしかない。
まあなんと理想をめざして失敗だらけのファウストだが「人間は努力する限り迷うものだ」と述べる。そして最後に天上に居るマルガレーテの世話で救われる。ファウストは、自分の欲望や願望に忠実に世界を変えようとする近代的人間そのものである。そして最後に自分だけでなく、世界を包む「愛」に気づくことが救済なのだとファウストは結論づける、それはベートーヴェンが第九交響曲で表現したことと同じである。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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