ロマン派の時代12-幻想交響曲と革命

7月革命の起きた1830年12月5日、フランスの作曲家ベルリオーズの「幻想交響曲」が初演され大評判を取った。いかにもフランスらしく、華やかで劇的で色彩豊かなシンフォニーである。バーンスタインは「史上初のサイケデリックな交響曲」と評している。

この交響曲は、ある音楽家が失恋のあまり、アヘンを服毒して見た夢の話で、第一楽章が「夢、情熱」第二「舞踏会」第三「野の風景」第四「断頭台への行進」第五「魔女のサバト」というタイトルがついている。フランスらしく、バレエをつけても上演されている。

このストーリーは、ベルリオーズが読んだ「ファウスト」の影響が見て取れる。しかし理想への情熱にとらわれて、そのあまり女性を殺して断頭台に送られ、地獄に落ちて魔女の仲間になって狂うというストーリーは、ある意味大革命からのフランス人の心情を表しているといえる。

初演では、第四楽章の「断頭台への行進」にアンコールが起きた。パリっ子達は、7月の革命の興奮を思い起こしたのは間違いないだろう。この交響曲のわかりやすい標題や、派手で官能的で大規模な管弦楽は、大勢の市民階級が、音楽文化に進出してくる時代にマッチし、この後ロマン派音楽に大きな影響を残し、ベルリリオーズは「近代管弦楽の父」と呼ばれる。

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