ロマン派の時代4-ドラクロワとアングル

1822年ギリシャ独立戦争において、オスマントルコによってキオス島住民が虐殺されるという事件が起こる。師ジェリコーの「メデューサ号の筏」のようなセンセーショナルな絵画を描きたいと思っていたドラクロワは、これを絵にしようと思い、24年のサロン展に出品した。

現実というよりは象徴的に描いた作品だが、当時はショッキングで、ドラクロワを高く評価していたグロでさえ「これは絵画の虐殺だ」と言ったという。ともかくこの絵は戦争のニュース写真のような効果を持ち、この後フランス世論はギリシャ戦争介入に動いていくので画家の望み通りといえる。

しかしこのサロンにはもう一作注目作品があった。正統古典派ダヴィッドの後を継ぐアングルの「ルイ13世の誓願」である。ルイ13世が聖母にフランスを捧げたというこの作品は、モントーバン大聖堂のために内務省が発注したもので、まさに復古期にふさわしい絵で、お偉方からは大好評をとった。

この後、この2人は時代と世論をまきこみながら、ライバルと目されていく。カトリックで伝統的フランスと、フランス革命を受けつごうとするフランス、まさに19世紀はさまざまな分野において双方が葛藤する時代であり、現代においてもこの2つが混在している。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。