ロマン派の時代3-メデューサ号の筏

1816年7月2日、メデューサ号というフリゲート艦が、セネガルに向かう途中でモーリシャス付近で座礁、146人の一般乗客は不安定な筏に乗せられた。が、船員らは筏を見捨て、助かったのは15人だけだった。船長は、ブルボン家によって政治任命された貴族で、長年航海を経験していなかった。

このニュースは、反ブルボンの立場の新聞にスクープされ、大スキャンダルとなった。船長は軍法会議にかけられたが、3年の収監で済んだ。そしてこの事件を描こうと思ったのが、画家テオドール・ジェリコーである。彼は、イタリア留学したが、理想を描く新古典主義に飽き足らず、現実を描きたいと思っていた。

ジェリコーは、報告書だけでなく、2人の生存者に直に会って、筏の模型までつくってリアルな状況を再現しようとした。1819年に公開されたこの絵は、賛否両論のセンセーションを巻き起こした。ロンドンでも展示されたが、24年に画家が急逝すると、絵はルーブルが買い取ってしまい込まれた。

この絵を「カラヴァッジョ風」と評した批評家もいるが、確かに静謐な新古典派をルネサンス風とすれば、この絵はバロック風である。彼はまさにその劇的な瞬間を鑑賞者に目撃させる、そしてこの絵に特定の英雄は居ないのも特徴である。この絵のモデルを務めたドラクロワはこの後ロマン派の旗手となる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。