1816年1月21日、前年のウィーンに引き続いてパリのサン=ドニ大聖堂でも、ルイ16世の命日にちなんで追悼式が行われた。このとき演奏されたレクイエムは「ルイ16世とマリー・アントワネットのためのレクイエム」と名付けられ、革命当時の王室楽団楽長だったマルティーニが作曲した。
翌17年同日の追悼式に演奏されたのが、ルイジ・ケルビーニ作曲のレクイエムで、この曲は非常に高く評価され、ベートーヴェンも「もしレクイエムを書けと言われたら、ケルビーニの曲だけを手本にしただろう」と言ったらしい。合唱のみで、劇的なロマン派の音楽である。
ケルビーニは、1788年にパリに住み、オペラを作曲して上演するが、時代が悪く、大劇場で演奏されなかった。しかし1805年にウィーンに招聘されてからもオペラをつくり、ベートーヴェンに評価され、また宗教音楽をつくるようになった。そして王政復古後に王室音楽監督となってパリに戻る。
王室はケルビーニを重用し、ルイ18世もシャルル10世も戴冠式の「荘厳ミサ」を作曲させた。ただしオペラは、当時人気絶頂だったロッシーニが乗り込んできたため、時代遅れの評価となった。23年10月16日には、アントワネット没後30年を記念して、彼女だけの追悼ミサが行われた。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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