中世の始まり2-奴隷王妃の解放宣言

フランク王国のメロヴィング朝では、宮宰のカロリング家が力を増していた。639年に2歳で王となった5代目王クローヴィス2世にはたいへんユニークな王妃が居た。王妃バルティルド、彼女はブリテン島の高貴な生まれだが、沿岸を荒らしていた海賊に連れ去られ、奴隷としてフランク王宮に売られたとのことだ。

王宮で彼女は少年王の目にとまり、彼女にプロポーズ。彼女は断ったが、649年2人は結婚したシンデレラストーリー。しかし在位8年657年に王は崩御。2人の息子がクロタール3世として即位し、彼女は摂政として国を治めることになった。

彼女は王権の力を強めるため、領主の勢力ではなく、当時勢力を拡大していた修道院に特権を与えて、その力で王権を守ろうとした。そして彼女は自分のかつての境遇を鑑み、ローマ時代から残存していた奴隷制度の廃止宣言を行ったのである。これ以後キリスト教徒では、普通奴隷になることはなくなった。古代末期のヒューマニズム宣言といわれることがある。

しかし、王権の教化に反対する勢力が彼女を摂政の座から降ろそうとしたため、彼女は息子に王権を託し、自分は修道院で一生を送り、死後列聖された。息子クロタール3世は、カロリング家の王位簒奪を終わらせ、メロヴィング王家はほんの一時的ではあるが安定して統治することができたのである。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。