苦悩と歓喜11-ゲーテとベートーヴェン邂逅

1812年7月19日、ついにテーブリッツで、ゲーテとベートーヴェンは邂逅し、2人で芸術論に花を咲かせた。ベートーヴェンは数回ゲーテにピアノを弾いたという。ゲーテは「あのように集中的で、エネルギッシュで、しかも内省的な芸術家に会ったことがない」と妻当てに手紙を書いている。

しかしベートーヴェンの知っているゲーテはあくまで文学上、特に初期の疾風怒濤時代のもので、現実のゲーテは、古典主義的になり、またワイマール公国の閣僚であり、この地に来たのも、ここはオーストリアのVIPがよく来るので、会って今後の情報を得るためだった。

そして、二人が散策しているところに、墺皇后マリア・ルドヴィカが通りかかると、顔の知れているゲーテは道を空けて恭しく礼をした。それにベートーヴェンは腹を立て「道を譲るのは彼らのほうだ」とド真ん中を歩いて帰っていったという。この簡単なことで世紀の邂逅はオジャンになったらしい。

この時期、オーストリアは、またもナポレオンに屈していた。単に貴族嫌いというより、情けない思いが出てしまったのだろう、現実を知る政治家ゲーテはあきれた。しかしこの二人は、二か月後には、友人のとりなしもあって再会し、誤解を解いて仲直りしたようだ。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。