苦悩と歓喜10-エリーゼのために

フランス軍が去り、疎開者も戻ってようやく落ち着いて、活気を取り戻したウィーンで、ベートーヴェンはまた創作意欲が出てくる。そして彼は恋をする、まずテレーゼ・フォン・アルファマッティ、当年18歳、ベートーヴェンは39歳、年齢的には微妙だが、本気で結婚を考えたらしい。

彼女にはピアノソナタを捧げているが、最も有名なのは「エリーゼのために」これは自筆譜発見者がそう書かれていたと言っているのだが、この自筆譜は消失している。エリーゼは残念ながらすぐ結婚してしまった。そしてある人を通して、ゲーテを紹介される。その人にゲーテは「彼とお近づきになりたい」と手紙に書いたそうだ。

1811年4月12日に、ベートーヴェンはあこがれのゲーテに手紙を書く。彼は幼少の頃からゲーテの書物に親しんでいた。ゲーテも6月にていねいな返事を送り、この歴史的な出会いは、翌年実現することになる。

夏には、ピアノソナタ「告別」を捧げたルドルフ大公に荘重な弦楽四重奏「大公」を捧げる。このようなポジティブな状況の中で作曲されたのが交響曲第7番である。第5番の深刻さ、第6番の静かさからうって変わって、華やかなリズムで、ワーグナーは「舞踏の聖化」と呼んでいる。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。