苦悩と歓喜9-ドイツロマン派フリードリヒ

フィヒテなどのドイツ民族ナショナリズムに鼓舞され、ドイツ独自の精神世界を描く芸術運動が起きてくる、それがロマン派である。ちなみにロマン派のロマンは中世のロマネスクのことであり、その大胆で自由な作風を標章とした。そして絵画での代表者が、フリードリヒである。

フリードリヒは、ドイツ最北端のフォアボンメルで生まれる。最初に注目されたのはワイマールの美術展で、審査員のゲーテが特賞を出したことである。その後ドレスデンで、画家は自由主義的愛国主義者と交流をもち、1810年にベルリン美術アカデミー展に出した作品がプロイセン王室に購入され、評価を高めた。

フリードリヒの描く風景は、フランスロココの優雅な風景ではなく、ドイツの荒々しい自然の風景であり、そこに神秘的なテイストを加味した彼の絵は、ドイツ人の魂の風景だった。彼はさらに古代のゲルマン英雄の面影を入れることで、ドイツの愛国主義の心情を揺さぶる。

ゲーテが称賛したのは、フリードリヒのドイツ的風景だったが、どんどんリアリズムから離れて象徴的になっていく画風に、やがてゲーテはフリードリヒと決別することになる。ゲーテはあくまで啓蒙主義者だった。フリードリヒも、その後政治的傾向が批判されるが、神秘的傾向は、エルンストなどに受け継がれる。

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キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。