イェーナに侵攻したナポレオンを「馬上の世界精神」と表現した者が居た。哲学の大家として名を残すゲオルグ・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルである。彼はその時、最初の哲学的主著となる「精神現象学」を書き上げようとして、フランス軍の侵攻に逃げまどっていたのである。
「精神現象学」は1807年に出版された。この書は、人間が感性から始まり、知覚から悟性にすすみ、さらに理性を獲得し、道徳にまで進んでいく、という人間精神の発展過程を哲学的に著述したものである。注目すべきことは、ここで初めて哲学に「発展」の概念が示されたことである。
ヘーゲルは、この発展の原動力を自己否定に求める。つまり今までの意識の低さで矛盾に陥って自己否定して、より高度な認識へと至る。ヘーゲルによって「否定」はむしろポジティブなものに位置づけられるのだ。この過程は大小の「論理学」によって、弁証法として体系化される。
ヘーゲルは、フランス革命に対して「思惟が精神的現実界を支配すべきことを認識する段階に達した」とこの上なく評価している。ヘーゲルの精神は個人の中に留まらない。精神は、世界をつくっていくのである。彼は後にそれを絶対理念の自己展開と名付けることとなる。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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