苦悩と歓喜4-交響曲第3番エロイカ

さて、ベートーヴェンの有名な第三交響曲は、私的な初演を1804年12月に行っている。この曲はボナパルトという名だと8月26日の手紙に書いている。ナポレオンのことを彼に話したのは、どうやらウィーンに来たフランスのヴァイオリン奏者クロイツェルらしい。ベートーヴェンは後にヴァイオリン曲を献呈している。

それが演奏されるときには「英雄交響曲ある偉大なる人の思い出に捧ぐ」となり、献呈先もコブコヴィッツ侯爵になった。ナポレオンが皇帝戴冠したのを怒ったという逸話があるが、変更したのはその前である。第二楽章に葬送行進曲があるのが失礼だとか、と理由があげられているが、そもそも敵国を堂々とウィーンで賛美できたか疑問である。

しかしこの従来の常識を超えた雄大な交響曲がナポレオンの影響なしにはありえなかっただろう。理想を現実にしていくナポレオンの姿に、自分も従来にとらわれず、理想をやってみようという勇気をもらったのではないだろうか。

第二楽章の死を乗り越えて、曲はポジティブになり、壮大なフィナーレに向かう。これはハイリゲンシュタットの遺書を乗り越えた自分のストーリーでもある。これからは誰もが英雄になれる時代であり、自分にもその権利がある、ベートーヴェンはそう思っていたのは確かだろう。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。