アマデウスの旅22-戦争オペラ皇帝崩御

さてフランスの反乱と妹のピンチに皇帝ヨーゼフ2世はというと、トルコとの戦争に捉われていた、あまつさえ前線に蔓延する疫病に冒されたのである。実に不運というかこういう偶然が重ならないと革命などは成功しない。さすがにウィーンも沈滞ムード、モーツァルトの困窮も関係している。

そんな中、台本作家のダ・ポンテが「こんなときこそオペラです」と提案する。彼は今度こそ自分のオリジナルな台本で脚光を浴びたかった。そして作られたのが「コジ・ファン・トゥッテ(女は皆こんなもの)」という喜劇である。恋人がトルコとの戦争に行った隙にトルコ人の間男が忍び寄る。実はそれは恋人の変装で愛を確かめようとしていた、というストーリー。

このオペラにはトルコとの戦争と厭戦気分が色濃く織り込まれている。そしていつものウィーンに戻って楽しもうというメッセージである。アマデウスも、最初から最後までウィーンらしい楽しい音楽を通し、さまざまな重唱の妙を創作した。

ところが上演が開始された1790年、その2月20日になんと皇帝が崩御し、上演は5回で中断され、喪が明けて再開されたが5回上演されたのみだった。その後、このオペラは内容が不道徳ということで、19世紀に低評価となり、20世紀に復活する。実に自由恋愛が当たり前の現在の扮装がハマるというオペラ。アマデウスはまたもや残念賞になった。

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。