王妃アントワネットが、正式な裁判でこの事件を公のものにしたことは、王権に対立する高等法院にかえってチャンスを与えてしまったし、絶好のゴシップのネタになった。アントワネットはその頃ハデな生活を嫌うようになったが、この事件は、何よりも王妃の浪費を印象づけた。
取り持ちをしたロアン枢機卿はかなり破戒坊主だったが、何と言っても枢機卿、フランスカトリック教会は、世俗裁判では裁かれず、聖職者特権の侵害と声明を出し、なんと教皇ピウス6世までそれに介入し、こちらに引き渡せと言ってきたのだ。アンシャンレジームの問題点が白日のもとに晒されたといえる。
ロアン枢機卿は、オーストリア大使としてウィーンで有名になったこともあり、妹も関係するこの事件に、皇帝ヨーゼフ2世も関心をもった。そしてヴェルサイユの中では、この事件をアントワネットとオーストリア派の失墜に利用する絶好のチャンスと考えた者も居て、高等法院の味方をした。
政府が逮捕起訴した者のうちでラ・モット伯爵夫人の他はすべて無罪になった。今の世の裁判でも威信失墜といえる。王権を弱めようとした者達の絶好のチャンスにこの事件はなったのである。この事件以後、高等法院とその周りの貴族達は、国王に逆らい、国家の危機をますます深めていく。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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