1776年、アダム・スミスの「国富論」が発刊された。経済学の古典として知られる著書だが、彼は道徳哲学教授だった。59年には「道徳感情論」を著している。この書の中では、人間の道徳感情は、「共感」によって集団的に得られている、と示されている。その共感をつくるものこそが経済社会なのである。
「国富論」では、人間は利己的であり、利己の利益のために、他人を共感させて、自分の欲しい物を得るために他人と交換する。それによって市場が成立する。そして分業が進展するとその交換によって社会が発展し、交換は共感をつくり、こうして安定した社会がつくられる。
アダム・スミスの立場は、ニュートンなどと同じ「理神論」の予定調和である。惑星体系と同じく「見えざる手」によって、大きな人間の社会体系も、人間に任せていれば、自然と調和していくというわけだ。だから彼は、規制や人為的介入を否定する。その最たるものが「重商主義」である。
重商主義は、輸出促進で財貨を稼ぐために、国内にいろいろな規制をかけた。スミスはそれは無駄だという。規制は、かえって産業の自然な発達を妨害する。彼は、当時問題になっていたアメリカへの抑圧にも反対する。しかしイギリスの産業革命を支えたのは政府の規制やアメリカの奴隷労働だった。
キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民
キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。
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