啓蒙の光9-ロックの社会契約説

1689年ジョン・ロックの「統治二論」が発表された。この書は、労働する人間の生命、健康、財産、自由という権利を自然権として承認するもので、公権力はこれを守るために個人との社会契約で成立する。これは名誉革命と議会の優越性を保護する論で、歓迎されその後大きな影響を残す。

ロックの生まれた時代は清教徒革命から王政復古へと大きく動く時代であり、ロックは政治や社会のありかたの原理を模索する。彼は医学もオックスフォードで治め、パトロンの医師をしたこともある。ジェームズ2世の時代には、彼もオランダに亡命した。

同じ時期に書いた「人間吾性論」では、人間は経験から理性を形作るとし、自分や国や社会が、揺れ動く時代の経験から理性的な政府をつくったことを哲学化している。彼によって、ロジャー・ベーコンからのイギリス経験論は確立したといえる。

しかし実は95年にロックは「キリスト教の合理性」を匿名で発表するのである。「人間吾性論」の経験主義では、すべての人に共通する道徳性や宗教性については説明できない。彼はキリスト教を神からの啓示として説明し、それが理性によって承認される。その媒介になるのはキリストの行う奇跡であるとする。この不十分さを説明するのがカントである。

下は統治二論とロックの肖像

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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

キリスト教なしに西洋史は読めないというほど深く痕跡を残しています。そういうキリスト教を念頭に置きながら、西洋史を読んでいこうと思います。もちろん批判的観点もおおいにアリ。 ローマ時代コンスタンティヌスから始まる長い物語、お楽しみいただければ幸いです。